ここでまずグラフィックデザインを簡単に定義しておきます。デザインとは、発信者と受容者の中間に位置し、コミュニケーションの仲介をする機能と同時に、発信者の意図を受容者へ「視覚的に伝達する」表現を備えた方法論を指すものと定義しておきます。
観光に関わるグラフィックデザインについて
観光に関わるグラフィックデザインを観光客側視点で時系列に並べてみると、観光地ポスター、旅行誌、旅行サイト。現地へ向かう道中のカントリーサイン、ラッピングバス、案内サイン類。そして現地での入場券、サイン類、お土産パッケージ、ゆかた、タオル…と次第に細かくなっていきます。
これらを分類すると「来訪動機誘発」「移動案内」「滞在証明」と分けることが可能で、前者2つは主に観光行政の担当になります。しかし近年、前者2つの部分がスマートフォンによるナビゲーションとSNSの定着によって表現方法が大きく変わり、滞在証明もスマートフォンによる撮影にウェイトが置かれるようになったため、その姿を変えなければならなくなりました。そうしたものは具体的に何をどのように変えていけばよいか、デザイナーの立場からみてどう映っているのか聞いてみたいと思います。
最近駅の観光ポスターでも、観光地の写真を載せたものではなく、ダジャレキャラクターとを組み合わせたようなものが増えてきたと感じます。デザイナーから見て、こうしたアプローチはどう感じますか?
昔から作ったもので人が「クスッ」と笑ってくれたら嬉しいなあと思っているので、こういうのは個人的に好きです。
観光地の写真を使ったものも素敵ですが、キャラクターなどを使用した方がパッと視覚に入って記憶にも残りやすいし、「あ、かわいい~!」とテンションが上がって会話のきっかけになったり、SNSなどでも話題になったりと、結果、観光地の存在をアピールすることになるのかなあと思います。
電車に乗っていると、スマートフォンを扱う人が確実に増えました。そうした機会に観光アプリやスマートフォン用のウェブサイトをデザインする時、キャラクターが使われたり、配色に工夫があったりしますけど、こうした手法は先のポスターアプローチとも関連があるのでしょうか? そしてAskさんは他にも地紋をデザインしていますが、かわいいことって視覚的に考えると大切ですか?
私たちの生活の中には様々な情報が存在し、多くのものを視覚から得ています。
そんな多くの情報の中、印象に残るようなキャラクターや配色で人に興味を持ってもらうところは一緒だと思います。地紋についてですが、パッと見た瞬間に「かわいい!」と感じるようなものは、人の感情を動かせたということかな? と思うので、かわいいことはとても大切だと思います。
観光地へ向かう途中や到着した後も、ゆるきゃらや萌キャラが観光地を彩っています。ただキャラクターは世界観を作ることはできるけど、空気感を作れないと思ってます。逆に文様だったり色使いは、神社やお寺がそうであるように、一定の視覚を刺激して空気感を作れると思っているのですが、今の観光地にはそうした工夫がさほど見られないように感じるんですね。
これってデザインが介入できる余地があると思うのですが、ポスターとかチラシを組み立てていく中で色使いや文様というのは、やはりそのチラシから発信される空気感とかを作り出すのに効果があるからデザインするのでしょうか?
その観光地などに合ったカラーや地紋をwebやポスターに使用することでグッとその観光地の魅力が引き立つのではないかと考えます。
先の質問と同じように、パッケージデザインについても色使いや文様、余白の使い方によって売れ行きが変わる事実がある以上、デザインがコミュニケーションをする相手に効果があることは頷けます。空気感とも関連してくると思うのですが、そうした部分を意識的にデザイナーとしては作っていくのでしょうか?
その観光地に置いても浮かないように、でもそれでいて目を引くものにしようとは常に思っています。
視覚的「かわいい」でテンションが上がって、購買意欲も上がってくれたら嬉しいです。
そもそもデザインを決定していく時、デザイナー側から見てどんな情報が必要なのでしょう? 依頼する側は丸投げに近い状態になってしまいがちなので、そのあたりを整理してもらえると多くの依頼主の人に役立つように思えます。
何を作るかにもよりますが…希望のカラーや「こんな雰囲気のものがいい!」と画像を具体的に見せてもらえば、そこそこのものができるかもしれません。が、特に地紋製作の場合は、観光地の歴史などをデザインに取り入れて意味のあるものにしたいので、色々わかる範囲で情報をもらえるとアイデア出しをしやすいです。
Askさんは依頼主さんに寄り添って親身になって考えるタイプのデザイナーだと感じます。最後に、Askさんはなにを目標にしてデザイン活動をしていますか?
今後は、自分の中で一番得意(かもしれない?)なシームレスパターンを取り入れたデザインを使い、観光地を魅力的に魅せるお手伝いが少しでもできればと思っています。
地紋パターンはカラーバリエーションやパターンの大きさが変わっても、共通項としての印象が変わらないので、地域に統一性をもたせながらも個々特徴をもたせたそれぞれの表現に使えます。メインロゴのしたにも敷けるので、じゃまにならない使い方なども可能ですから、地域DMOで使用権利を持って幅広く使えるようになっていると、観光地の空気感を演出できるようになると思われます。
Askさんの地紋デザイン
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